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2019.02.22

「副業・兼業」解禁でクリエイティブ業界はどう動く!? 経営者が押さえておくべきポイントを解説!!

「副業・兼業」解禁でクリエイティブ業界はどう動く!? 経営者が押さえておくべきポイントを解説!!

平成30年1月「副業・兼業」について、企業や働き方が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかまとめたガイドラインが発表されました。そのため、「副業・兼業」に関する話題が、最近ホットになってきています。また、すでに副業・兼業を取り入れている企業も少しずつ増えてきています。「副業・兼業」を自社で取り入れるにあたり、そのメリットやデメリットは何か、さらに克服すべき課題などについて解説します。

副業・兼業の定義とは?

「副業」とは、「本業を主体とし、本業よりも低い労力で行う仕事」のことを意味しています。
つまり、言葉の意味としても「2つの仕事を比べた場合、本業に重点がおかれているために副業は労力の比重が低い」という意味合いを含んでいます。この「本業に重点がおかれているため、副業は労力の比重が低い」という点がポイントとなります。

一方で、「兼業」とは「本業の他に他の事業・仕事を重ねて行うこと。また、その事業や仕事」という意味です。
例えば、兼業と聞いて思い浮かぶのは「兼業農家」と言ったような、「兼業のあとに何かしらの職業が付く」言葉かと思います。「兼業農家」で仕事を行うということは、「専業農家」として農業のみで生計を立てている人もいるということになります。それを「兼業している」、つまり「2つの仕事を同程度の労力で行っていること」を意味します。

 

企業における副業・兼業のメリットとデメリット

副業・兼業に関して企業側から見たメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれ見てみましょう。

・メリット
副業・兼業をすることで、
(1)従業員が社内では得られない知識やスキル、人脈を獲得し、それを本業に活かして事業の貢献に繋がります。
(2)従業員の自律性や自主性を促すことができます。
(3)優秀な従業員獲得ができ、一方で優秀な従業員の退職を防ぐことができます。

・デメリット
(1)副業・兼業する従業員の労働時間管理、残業代の計算が複雑※になります。
(2)企業が従業員の健康を管理することが難しくなります。
(3)情報漏えいの防止や企業秘密の保持、競業避止のリスクが増えます。

※複数の会社で勤務する労働者の場合、労働時間は会社ごとではなく「全ての会社を通算」し計算します。
例えば、A社8時間労働→B社3時間労働=通算11時間労働となった場合、時間外手当を上乗せした賃金をB社が3時間分支払います。 8時間を超えた場合は原則として、「時間的に後から労働契約を締結した会社」が割増賃金の支払い義務を負います。そのため、副業先の会社は、本業で1日何時間働いたかを確認する必要があります。

制作会社、あるいはクリエイターを雇用している企業から見たメリットとしては、自社における制作物のクオリティ・企画力アップや、ディレクションのような他社で学んだスキルがそのまま自社で活かされるので、教育のコストと時間が節約できるというのは魅力でもあります。

ただ、デメリットにある「労務」に関した複雑さと管理の難しさ、さらに情報漏えいなどのリスクは、常に真新しさを求められるクリエイティブ現場では致命的な打撃となるのも事実です。


 

副業・兼業導入にあたって必要な体制

そのため、この新たな働き方を認める上でまず必要なのが「運用体制の整備」です。

今回は「労務管理」の観点から、副業・兼業を受け入れるためのルール作りを考えてみます。社内ルールを確立する際にあたっては、厚生労働省が示す「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が参考になります。その中で、副業・兼業容認企業が「着目すべき具体的観点」を3つ挙げます。

(1)申請フローの確立
労働時間の長時間化や企業秩序への影響を考慮し、あらかじめ副業・兼業の内容の届け出をする必要があります。

(2)就労・健康の状況把握
総労働時間の把握、必要に応じた健康診断の実施、時間外・休日労働の免除や抑制などに配慮する必要があります。

(3)禁止事項の周知徹底
労働者の職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を徹底するため、就業規則の改訂、副業・兼業の関わる規程作成をし、周知する必要があります。

トラブル回避のため、副業・兼業を適切に運用するには、
1. いつ、どのような方法で届出をしてもらうのか
2. どのような場合に禁止・制限の対象とするのか
3. 副業・兼業中にどのようなことを守らなければならないか

という点を押さえ、整備することが大切です。

参照 : 厚生労働省「副業・兼業の推進に関するガイドライン」


 

副業・兼業に取り組む「クリエイティブ企業」事例

副業・兼業制度の導入へ積極的に取り組んだ事例として、制作関連企業の「株式会社MUGENUP」というところが、経済産業省のホームページで紹介されています。その事例を見てみましょう。

参照 : 経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集について」

●副業・兼業に踏み切った背景・狙い
『創ることで、生きる人を増やす』という企業のビジョンを実現させるため、クリエイターに自由な新しい働き方を提供したい背景があり、クリエイティブに関わる副業を支援し本人のモチベーションアップや、多様な経験が従業員の創造性や知見を成長させると判断、制度を導入。

●副業・兼業におけるルール
・対象者
アートディレクターやイラストレーター、制作進行など、クリエイティブ制作に関わる担当者で、かつ社員以上の者。

・認めている業務(範囲 金額、時間、内容など)
副業の内容は企業本質である「クリエイティブに関わるもの」とし、本人の成長を促すものに限り、競業避止や守秘義務など、社会人としての一般常識の範囲内で「本業に影響が出ないこと」を前提。

・社内手続き/届出(誓約書提出、業務報告など)
毎月、所属部門長に対する届出と上長の承認を必要とし、毎月10~15分ほどの面談を実施して副業の内容や負担などを上長がヒアリング。本業の勤怠に影響が出た場合(月2回以上の欠勤・遅刻・無断欠勤)は、副業を一時停止。

●副業・兼業を行う従業員へのサポート
副業を制度化して明文化することで、社内の副業に対するネガティブな視線を排除。副業を希望する者は毎月、上長の面談が必須。定期的な現況のヒアリングで過重労働の防止、制度の目的であるクリエイティビティの成長につながるサポートを実施。

その結果、副業の公認によってクリエイティブ活動の可能性が広がり、やりがいやリフレッシュなど、実際に従業員のモチベーションアップへ繋がりました。また社外の知見を学び、新事例や仕事のやり方に接したことで従業員の生産性や創造性が成長、社会人としての自立や意識改革ができたそうです。

一方で、勤怠をはじめ、評価の難しさや業務の質や効率など、本業に悪影響が出ていないかの判断や評価が難しいこと、労務管理として労働時間や健康管理、副業でのトラブルなど、副業が広がるほど様々なリスク管理が必要であることが今後の課題になっているようです。

 


まとめ

副業・兼業については、現状、原則禁止とする会社が大半だと思います。副業・兼業によって、従業員が本業に支障をきたすようでは困りますし、別会社において「競業・利益相反」などのリスクを抱えることにもなりかねません。また、健康管理や労働時間の把握も困難になるでしょう。

しかし、課題は多いものの、適切な運用は従業員の成長やキャリアの自信と安心、生産性の向上が期待できることも確かです。多様性や少子高齢化など、変化の激しい時代だからこそ、人材確保と定着の観点からも先を見据えて検討することも必要かもしれません。

 

執筆
社会保険労務士法人ユニヴィス
社会保険労務士 池田久輝

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